飛行機墜落 ジャングルで生存した少女

父の待つプカルパの町へ

1971年12月24日クリスマスイブの日、17歳の少女ユリアナは、離れて暮す生物学者の父を訪ねるために、鳥類学者の母マリアとともに大型のプロペラ機でペルーの空港を飛び立った。座席は満席で、目的地はアマゾン川流域にあるプカルパという町である。

最初は順調なフライトだった。だが飛行機が雲に突入すると、乱気流にまき込まれて激しく揺れ出した。

棚からは荷物が落ちだし、機体は今すぐにでも割れてしまうかのように激しく上下に揺れだした。

母は手で顔を覆い恐怖でうずくまっている。

激しい揺れの中、突然閃光が走る。

落雷が燃料タンクを直撃したのか窓の外から見える翼からは炎が吹き出している。

その直後、翼は爆発し真っ二つに折れ、飛行機は空中でバラバラに引き裂かれてしまった。

ユリアナは座席ごと宙に放り出され、ジャングルの中へグルグルと回転しながら落ちていく・・・ユリアナは落下中気を失ってしう。

ジャングルでの過酷なサバイバル・・・

目が覚めるとユリアナは、ジャングルに横たわっていた…

最初自分に何が起きたのか理解できなかったが、飛行機が墜落したことを思いだし自分が運よく生き残ったことを理解した。周囲を見渡すと、あちこちに飛行機の残骸や死体が目についた。母の名を叫ぶが何も応答はない・・・

 

ユリアナは体に巻き付いていたベルトを外すとよろめくように歩きだす。

ユリアナはしばらく歩きながら、ふと「ジャングルで迷ったら、まずは川を見つけ、下流に下りなさい。そうすればいずれ人里に到達できる」という父の教えを思い出していた。

しばらくして小川を見つけることができたユリアナは、それを伝って下流に向かった。

 
ジャングルで初めての夜が始ろうとしていた。暗闇の中あちこちで何かが動き回る音がし、時おり猛獣のうなり声が聴こえる・・・

ユリアナは疲れていたが、何かが襲ってくるのではないかとの恐怖でなかなか寝付くことができずにいた。それとユリアナを悩ませたのは蚊の大群であった。次々と襲ってくる蚊に寝不足も相まって頭がどうにかなりそうであった。

ジャングルでの厳しい洗礼を受けながらも、ユリアナは次の日も、また次の日もひたすら小川をたどって歩き続けた。

 

奇跡の詩

この事件は「奇跡の詩」という映画にもなっている

ジャングルにはクロコダイルや大蛇などの様々な危険な生物も沢山いたが、ジャングルや生き物に詳しい父や母の教えを思い出し、無事なんとかやり過ごすことができた。

今、猛獣よりも気になるのは背中の傷口であった。傷口に肉バエが卵を産み付け、蛆虫が皮膚の中をうごめいていたのだ。取ってもとっても次々と出てくる蛆虫にユリアナは精神的に参ってしまっていた。ジャングルでの遭難が長期にわたるにつれ、ユリアナは様々な幻覚にも悩まされていく。もう体力も限界に近い・・・

 

ジャングルでの生活はすでに9日目に突入していた。

ジャングルからの脱出 父との再開

精神を奮い立たせてひたすら川沿いを進んでいると、ユリアナは無人のカヌーを発見した。

「近くに人がいるに違いない!」そう思ったユリアナが辺りを捜索すると山小屋を見つけることができた。

ふらつきながらも最後の力を振り絞って小屋にたどり着くと小屋には誰もいなかった。ユリアナ落胆し気を失ってしまう。数時間後、林業従事者たちが仕事を終えて小屋に帰ってくると、身体中傷だらけでぼろぼろの格好の少女が小屋の中に居ることに驚いた。

ユリアナは自分のことを墜落した飛行機の乗客の一人だといっても林業従事者たちは容易に信用してくれなかった。無理もないことである。何しろ墜落現場はこの小屋から2百キロも離れていて、事故の報告があってからもう9日も経っていたからである。

林業従事者たちはできる範囲でユリアナの傷の手当をし、背中の蛆も取り除いてくれた。30匹以上もの蛆虫が背中から出てきたそうである。

翌朝、林業従事者たちは丸一日かけユリアナをカヌーで下流に運んでくれ、そこからは空路を使い、父の待つプカルパの病院に運ばれた。 病院で父と再開できたユリアナはしっかりと抱き合った。

 

ユリアナはこの飛行機事故で92名中たった一人の生存者であった。